江木姉妹小伝(45)

 中勘助の文章には若干の文学的誇張が入っていると思われるが、ともかく当時定
男は大学二年生。ませ子も女学校在学中という、当時まだ珍しい部類に入る熱烈な
恋愛の末、若い夫婦ができたのである。しかし中勘助の文にも「予想される困難に
ついて心配」とあるように、親戚からもだいぶ反対の声があったらしい。それはふ
たりの若さが原因ではなく、結婚はしたものの、定男の父・保男の後妻である義母
が悦子、つまり、ませ子から見ると、姑が実姉の悦子になるということになったで
ある。
 ここらへんのいびつな血縁関係が後に波紋を呼ぶのであるが、そこらへんの事情
はひとまず後にまわすとして、まずはこちらの江木家の人々について見ていくこと
としよう。

<つづきますよ。本当です。>