ぽっぺん先生

<B>『ぽっぺん先生と帰らずの沼』</B>(舟崎克彦ちくま文庫)読了

最近の子供は本を読まなくなったとはいえ、誰にでも繰り返し繰り返し読んだ
お気に入りの本があるに違いない。例えそれがドラえもんであったとしても。
オレが小学校中学年の頃、夢中になって読んだ本がこれである。その頃市立図書館
に通っている時期があって、よくコレを借りて読みふけったものである。
ぽっぺん先生』シリーズは現在7冊あるらしいが、その図書館に当時あったのは
ぽっぺん先生の日曜日』『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』そして本書である。
ちくま文庫に落ちたのは10年以上も前の学生の頃のことだが、読み返すのは今回
が初めて。たまたま古本屋で見つけたからである。

さてこうして読み返してみると、やっぱりとてつもなく面白い。鳥になって独活大学
を鳥瞰で見下ろす光景、真っ暗闇の中、自分の体が崩れていく感覚、そして蟻の大群
を空から見下ろすところ、当時想像力で頭の中に作り上げた光景が、ふと甦ってくる
のである。んー、ノスタルジーだねえ。

さてこの本はいわゆる児童文学で、赤い鳥文学賞を受賞しているというから、やはり
名作だったのだろう。独活大学のさえない生物学の先生が主人公で、ひょんなことから
ウスバカゲロウに変身し、続いて珍魚鼻長魚、カワセミ、イタチへと転身を続けていく。
自分が書いていた論文の生存競争の食物連鎖に取り込まれていることに気付き、なんとか
人間に戻ろうと四苦八苦するが、その生物の生活の楽しさや苦しさ(恋愛も生死も)を
経験していくというお話。勧善懲悪の安っぽい作りでもなく、辛く真面目な堅苦しいもの
でもない、いいお話です。
ちくま文庫に降りたということは、大人の読者にも耐えられると思われたのでしょう。
今は品切れなのが残念な一冊。

今日買った本
 「モノ・マガジン」No.425ビートルズ特集(ワールド・フォトプレエス/\620-)
 『銀座物語』(野口孝一/中公新書/\840-)