弥次郎(4)

弥:ところがこっちの体の重みで生きてると気が付いて暴れ出した。さぁどっかに掴まろう。慌てて跨ったんで、後ろ前に乗っちゃった。尻んとこへぼんぼ尻。こんな短い尻尾がぴょこぴょこぴょこぴょこしてる。そんなもの掴まったってしょうがないから、ふっと股ぐらに手ぇ入れたら、ぐにゃあ。はは・・・はは・・・股ぐらぁ、ぐにゃ。旦那、こりゃ、何だと思います?
旦:分からん
弥:こりゃシシの金ですよ。イノシシってぇのは無精ですよ。フンドシしてねぇ
旦:当たりめぇだ
弥:人間でも畜生でも急所に変わりはねぇと思うから、この金をえーーーっ。金絞りってやつなんで。今度はバタンキュー。それから皮剥いで帰ろうと思ってね、刀で腹をつーっと割いたら、ぴょぴょぴょぴょぴょぴょ子供が飛び出しまして。
旦:シシの子がかい
弥:ええ、十六匹出ました
旦:ははぁ・・・シシの十六かぃ
弥:旦那知ってましたかぁ
旦:知ってるよ。よく寄席ぇ行って聞いてるから
弥:でもさすが野生だねぇ。たしたもんだ。今生まれたと思ったら、見てるとね、ちょこちょこちょこちょこ歩き始める。みるみるあっしの周りを十六匹のシシの子供が取り巻いて、棒きれなんかを持って“父ちゃんのカタキ、父ちゃんのカタキ、父ちゃんのカタキ”言われた時ぁ驚きましたねぇ
旦:こっちが驚いたよ。お前今どこを絞めて殺した
弥:金ですよ。
旦:じゃお前オスだろう?
弥:えー・・・そりゃオスですよ。メスに金は、ありませんからね
旦:オスの腹から子がでるかい、オスの腹から
弥:そこが畜生の浅ましさ

おあとがよろしいようで・・・