本は読んでいる

『虹の翼』(吉村昭講談社文庫)
明治時代にライト兄弟より早く飛行機の模型を飛ばし、人間が乗る飛行機の製作を
夢見たが、諸処の理由で断念した二宮忠八の物語。二宮忠八の日記が元になって
いるらしいが、若い頃の凧にのめり込んだとき、軍隊に入ってカラスの観察から飛

原理を研究して模型を飛ばし、陸軍内で上申書を提出するが、却下。までは面白
い。
が、後半生は飛行機の製作を夢見ながら薬会社で一旗あげてしまうあたりは、そち
らがあまりに詳しすぎて、飛行機物語を期待しているこちらとしては煩わしく感じ
る。
まあノンフィクションと言われればそれまでだが、ストーリーテリングとしてはど
うか
なあ?という感じである。短編か中編ならよかったかもね。

マークスの山』(高村薫講談社文庫)

高村薫は文庫になったのはだいたい読んでいて、これも前に読もうと思って
文庫に落ちるのをずーっと待っていたのだが、やっと文庫化。長かった。
しかしいつの間に講談社に移っていたのだろう?
ま、ともかく『マークスの山』。これまでかちんこちんの文体と感情移入できない
登場人物と描写ばっかりだった(でも面白い)高村薫にしては、かなり読み
やすくなっている。さすがに「読ませる」ので、一気に読み上げてしまう。
やっぱ巧いねえ。警察の現場と上層部とか地方と中央とかどろどろした
ところとか、妙に詳しい山男の心情とか、さすがです。ちょっと門閥に過大
な期待をしているのと、ラストがちょっと弱いかな?てのが難点といえば
難点。でも本なんてのは読んでいる間に幸せであれば、それでいいのです。
なんて、それでいいのか?

ウチの部長は『たそがれ清兵衛』を推しているのだが、どうも推薦の辞が
お勉強くさくていけない。読書に何かを学ぼう、とか、何か得るモノを、とか
期待しないで、500円なり600円なりの楽しんだ時間が過ごせればそれ
でいいと思うのだが。読書は勉強じゃないんだし。

ところでウチの会社のごく1部で高村薫小ブームが起きている。って廻し読
みしてるだけなんだけど。

最近読んだ本。

ローマ人の物語/終わりの始まり』塩野七生
『テレビの黄金時代』小林信彦
『コラムは笑う』小林信彦
『幕府歩兵隊』野口武彦