おでんでんでん。

年末に神田の老舗みますやへ行ったら満席だったので、以前
目をつけたおでん屋へ行ってみる。建物が古い看板建築で、
こういった店はただのボロ店か歴史ある店なのか紙一重である
のだが、とりあえず後輩と突撃してみた。
サッシの引き戸を開けると、小さな店内に8席くらいのカウン
ター。床はタタキで左側には2卓ほどの小さな小あがり。
小あがりの真ん中に灯油ストーブがどんと鎮座しており、テー
ブルには雑誌やら新聞やら拡大鏡が散乱しており客が入る
スペースはない。しかも、年末だというのに、客がひとりもい
ない。

奥から出てきたのは年齢不詳のおばあちゃん。逃げるわけに
もいかないのでカウンターに腰掛けて、まずはビールを頼む。
おばーちゃんが開口一番「今日は大根を切らしていてね」
なんておでん屋なんでしょ(笑)
しかもさっきから気になっていたカウンターの上の新聞包みは、
大皿にあけたおでんダネであった。おばーちゃん曰く、
「佃煮じゃないんだから煮込みすぎちゃダメなの」
だそう。事前に煮込んであったタネを、注文に応じて温め直す
のである。
聞くとこの店は戦中からやっているおでん屋で、おばーちゃんは
2代目。建物自体は更に古いらしい。ここらで一番古いという
ばーちゃんの言葉が真実であれば、昭和2年築のみますやより
昔。
他に客がいないので、自然とおばーちゃんのお相手をしなけれ
ばならないわけで、この手のお店の常として、あれもこれも食べ
なさいと言われて熱燗(神田橋)を傾けながらおでんをつつき、
BGM代わりのラジオを背景に、表では時折「火の用心カチ、カチ
」が通り過ぎる。ラジオの内容さえ無視すれば、戦前のおでん
屋で飲んでいると錯覚してしまうようなお店であった。

で。肝心のおでんはというと、醤油や化学調味料を一切使って
いないと自慢する(約25年モノとのこと)だしがいい味出してて
タネも美味でした。えーと、年末なんで仕入れを止めたんだろう
けど、大根がなかったのが残念。
しかし、たぶんこの日最初で最後の客だぞ、うちらは。築地じゃ
なくて北海道物産展でダシの日高昆布とメイクイーンを仕入れる
と言ってたので、ほとんど客は来なくて趣味ってか、惰性でやっ
てる店だと思うぞ。それとも古馴染みがいるのだろうか?

お勧めだけど、かなり通好みの店だからなあ…(笑)
気になる方は神田須田町おでん三金までどうぞ