江木姉妹小伝(25)

袱紗に顔を包み
 悲しい最期
  欣々女史の遺書開封

【大坂発】廿日夜、静養のため帰つてゐた里家の実弟大阪市住吉区北田
込町の早川徳次郎氏邸で自殺した江木欣々女史は早川邸の縁側の梁で藤
椅子を踏み台にして錦紗のしごきで縊死したもので、醜くなる顔をみせ
ぬため江木家の定紋の入った袱紗で顔をおほい右手に水晶の珠□をかけ
てゐた なほ廿一日故女史の養嗣子江木富夫氏や女史の恩顧を受けた拓務
省の高橋秘書課長など来阪したので午後十一時から親族会議を開いて書
置きを披いたが、それは巻紙へ
 あと/\の事富夫と御相談の上
 万事よろしくねがひ上候
 徳次郎様御夫婦へ
  二月廿日      栄子
とあり、また叔父に当る東京市外中野新町三、七八七の関信利氏夫妻に
宛てた絵はがきには
 御親切なる御見舞下され(中略)
 当市滞在二ケ月の中五十日も臥
 床の身と相成り実に閉口この上
 なく候、心身に多少無理を致し
 ても帰京致すべく候
更に東京府下杉並高圓寺「高橋京子様」あてで
 私今以て病魔閉口にて全快次第
 帰京致すべく候
とあるのみで今度の自殺は全く発作的のものらしい、因みに遺骸は廿二
日近親者ばかりで告別式をとり行ひ同夜午後九時を執行のはず
東京日日新聞昭和5年2月22日朝刊】

<A HREF=http://www.cc.rim.or.jp/~hustler/archive/egi.html><続く></A>