IWOJIMA

硫黄島星条旗 』 ジェイムズ ブラッドリー/ロン パワーズ
(文春文庫)読了。

アメリカ人にとって第二次大戦の中でも硫黄島の戦いってのは
かなり特別なものだったらしく、それには大人数の犠牲者を出し
たってのも確かに理由のひとつではあるのだけれども、やっぱり
硫黄島の擂り鉢山翻る星条旗の写真、あのイメージってのはかなり
強烈なんじゃないかと思う。
で、この本はその瞬間にたまたま擂り鉢山の山頂にいて、たま
たま写真に取られた6人の生い立ちから死までを追った本。そして
この作者の父親がそのひとりであるのだが、家族にすらそのことを
隠していたのは何故なのか、を、追った本。
戦記ものはよく読むが、やっぱみんなあたりまえのことをあたりま
えのようにやって、たまたまぐーぜんヒーローに祭り上げられちゃう
のである。そういうトーンで書かれているので、あまり華々しさは
ないが、普通の人が運命にもてあそばれていく様は、面白いと
言っちゃいけないんだけど、興味深い。

ところで日本との戦いもの、ってのは、日本軍の扱いがどうにも
カンに障るのである。まあ、敗戦国だからしょうがないっちゃあ
しょうがないが、作者が「日本に対してもフェアに書いた」と言っ
ているほどフェアじゃない。なんだか不気味な生き物みたいに書
いて欲しくないなあ・・・例え軍部に強制されたというせいにしてい
たとしても、そんなロボットみたいなじゃなくて、みんな自発的に
戦ったのよ。アメリカ軍と同じにね。
まあ、911テロと同様、異文化の生死感は、アメリカ人の想像を
絶しているんだね、きっと。