江木姉妹小伝(56)

さてこの敗走を受けて新政府軍は戦陣を立て直し、江木鰐水は岡田総督と共に福山藩の一部を率いて函館を発し、24日早朝、大野村に布陣する。兵に朝飯を取らせた後に配陣しようとした矢先、敵襲の報を受ける。ちなみに大野村を攻撃するのは幕軍歩兵奉行大鳥圭介率いる伝習隊である。新政府軍は兵を東側の杉並木に布陣しようとするが、既に旧幕軍が迫っており、銃撃戦となる。新政府軍自慢の大砲も地盤が緩いために一発撃てばひっくり返る有様。旧幕軍は地理にも通じている様子で間道を通って新政府軍を側面から脅かす。鰐水は七重村に向い、清水谷公考大総督と軍議のうえ、西洋式要塞である五稜郭に籠もって守備に徹し、秋田にいる長州・肥後兵の援軍を待つことに一致するが、五稜郭には銃砲が足りないうえに兵も足りない状況。鰐水は大野村へ戻るが、徹夜明のうえ疲労困憊し、久根別亀田念仏堂で夕食後昏睡する。この間、鰐水の道案内をしていた利助が逃亡。夜半に目覚めると新政府軍が続々と敗走してくるのに遭遇し、前決の通り五稜郭に撤退することに決し、25日払暁鰐水は五稜郭へ走る。そしてこの後鰐水には信じられない展開となる。